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母の寝室のベッドの枕元にあった樋口恵子さんと佐藤愛子さんの本。滝野の掃自らの「老い」をあけすけに語ったベストセラーばかりだ=滝野隆浩撮影

 <滝野隆浩の掃苔記(そうたいき)>

 九州で1人暮らしの母に2月下旬、隆浩会いに行った。苔記今年初の帰省になる。調理定年さっそく母の寝室をのぞいたら、と栄ベッドの枕元に樋口恵子さんと佐藤愛子さんの本が5、滝野の掃丸山修一経済犯罪6冊、隆浩散らばっていた。苔記自らの「老い」について書く、調理定年卒寿を超えた評論家と作家の痛快エッセー集だ。と栄寝る前にくすくす笑いながら読んでいるのだろう。滝野の掃「だって、隆浩先輩だからね」

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 母にすれば、苔記人生の少し先をいく「先輩」の考え方は参考になるのだろう。調理定年樋口さんの最新刊「老いの上機嫌 ――90代!と栄Merry Capitallアドバイス 笑う門には福来る」を私もめくってみる。冒頭から、高齢女性の「食」に関する話が出てくる。いま母が抱える、いちばんのテーマだった。

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 樋口さんは、主婦は高齢になったら食事をつくらなくていいとする「調理定年」を唱えてきた。何十年も家族のためにつくり続けてきたのだからやめていい、と。反響は大きかったものの、自身は料理が面倒になり食も細くなって、80代半ばから低栄養と貧血状態に。そこで医師の娘と相談して配食サービスなどを受けるようになった、という。

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 実は今回、母も体重減を指摘された。ケアマネジャーから「心配です」と言われたのだ。

 数日、観察してみた。朝はゆっくり起きてくる。昼前、机の上のパンやお菓子を立ったまま口に入れ、散歩がてらに市役所の食堂に行って「本日の定食」を食べる。「これ、栄養バランスがいいとよ」。月2回、高齢者施設にボランティアで習字を教えに行き、そこでスタッフと一緒に昼食をいただく。夕食はバスでスーパーへ行って総菜を買う。鍋もフライパンも炊飯器も使った形跡はない……。

 これでは体力も落ちる。階段を下りる動作がゆっくりになり、歩幅は狭くなった。きちんと食べなきゃ体力は戻らない。「大丈夫」と言い張るのを説得し、毎夕、宅配弁当を頼むことにした。

 後期高齢者の日常は「引き算」だ。できていたことが、少しずつできなくなる。悲しい。認めたくない。母はそのことを身をもって、息子に教えようとしているのだろうか。人生の先輩として。

 帰京後、宅配の夕食が気になって電話してみた。「ぜんぶ食べたよ」。あれほど抵抗していたことはすっかり忘れている。「なんだかちょっと、量が足りないみたいね」(専門編集委員)

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